魚も一ぴき残らず、
「はいはい、ちゃんとご奉公申しあげます」とご返事をしましたが、中でなまこがたった一人、お答えをしないで黙《だま》っておりました。
すると宇受女命《うずめのみこと》は怒って、
「こゥれ、返事をしない口はその口か」と言いざま、手早く懐剣《かいけん》を抜《ぬ》きはなって、そのなまこの口をぐいとひとえぐり切り裂《さ》きました。ですからなまこの口はいまだに裂けております。
二
そのうちに邇邇芸命《ににぎのみこと》は、ある日、同じみさきできれいな若い女の人にお出会いになりました。
「おまえはだれの娘《むすめ》か」とおたずねになりますと、その女の人は、
「私は大山津見神《おおやまつみのかみ》の娘の木色咲耶媛《このはなさくやひめ》と申す者でございます」とお答え申しました。
「そちにはきょうだいがあるか」とかさねてお聞きになりますと、
「私には石長媛《いわながひめ》と申します一人の姉がございます」と申しました。命《みこと》は、
「わたしはおまえをお嫁《よめ》にもらいたいと思うが、来るか」とお聞きになりました。すると咲耶媛《さくやひめ》は、
「それは私からはなんと
前へ
次へ
全242ページ中65ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング