浮橋《あめのうきはし》をもおし渡《わた》って、どうどうと下界に向かってくだっておいでになりました。そのまっさきには、天忍日命《あめのおしひのみこと》と、天津久米命《あまつくめのみこと》という、よりすぐった二人の強い神さまが、大きな剣《つるぎ》をつるし、大きな弓と強い矢とを負《お》い抱《かか》えて、勇ましくお先払いをして行きました。
 命たちはしまいに、日向《ひゅうが》の国の高千穂《たかちほ》の山の、串触嶽《くしふるだけ》という険《けわ》しい峰の上にお着きになりました。そしてさらに韓国嶽《からくにだけ》という峰へおわたりになり、そこからだんだんと、ひら地へおくだりになって、お住まいをお定めになる場所を探し探し、海の方へ向かって出ておいでになりました。
 そのうちに同じ日向《ひゅうが》の笠沙《かささ》の岬《みさき》へお着きになりました。
 邇邇芸命《ににぎのみこと》は、
「ここは朝日もま向きに射《さ》し、夕日もよく照って、じつにすがすがしいよいところだ」とおっしゃって、すっかりお気にめしました。それでとうとう最後にそこへお住まいになることにおきめになりました。そしてさっそく、地面のしっかり
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