やろうとお思いになって、その晩、大国主神を、へびの室《むろ》といって、大へび小へびがいっぱいたかっているきみの悪いおへやへお寝《ね》かせになりました。
 そうすると、やさしい須勢理媛《すぜりひめ》は、たいそう気の毒にお思いになりました。それでご自分の、比礼《ひれ》といって、肩《かた》かけのように使うきれを、そっと大国主神におわたしになって、
「もしへびがくいつきにまいりましたら、このきれを三度|振《ふ》って追いのけておしまいなさい」とおっしゃいました。
 まもなく、へびはみんなでかま首を立ててぞろぞろとむかって来ました。大国主神《おおくにぬしのかみ》はさっそく言われたとおりに、飾《かざ》りのきれを三度お振《ふ》りになりました。するとふしぎにも、へびはひとりでにひきかえして、そのままじっとかたまったなり、一晩じゅう、なんにも害をしませんでした。若《わか》い神はおかげで、気らくにぐっすりおよって、朝になると、あたりまえの顔をして、大神《おおかみ》の前に出ていらっしゃいました。
 すると大神は、その晩はむかでとはちのいっぱいはいっているおへやへお寝《ね》かせになりました。しかし媛《ひめ》が、
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