いっしょうけんめいに介抱《かいほう》して、ようようのことで再びお生きかえらせになりました。おかあさまは、
「もうおまえはうかうかこの土地においてはおかれない。どうぞこれからすぐに、須佐之男命《すさのおのみこと》のおいでになる、根堅国《ねのかたすくに》へ遁《に》げておくれ、そうすれば命《みこと》が必ずいいようにはからってくださるから」
こう言って、若《わか》い子の神を、そのままそちらへ立ってお行かせになりました。
大国主神は、言われたとおりに、命のおいでになるところへお着きになりました。すると、命のお娘《むすめ》ごの須勢理媛《すぜりひめ》がお取次をなすって、
「お父上さま、きれいな神がいらっしゃいました」とお言いになりました。
お父上の大神《おおかみ》は、それをお聞きになると、急いでご自分で出てご覧になって、
「ああ、あれは、大国主という神だ」とおっしゃいました。そして、さっそくお呼《よ》びいれになりました。
媛《ひめ》は大国主神のことをほんとに美しいよい方だとすぐに大すきにお思いになりました。大神には、第一それがお気にめしませんでした。それで、ひとつこの若い神を困《こま》らせて
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