ひめ》をご自分のものになさることはできません。あなたは袋《ふくろ》などをおしょいになって、お供《とも》についていらっしゃいますけれど、八上媛はきっと、あなたのお嫁《よめ》さまになると申します。みていてごらんなさいまし」と申しました。
まもなく、八十神たちは八上媛のところへ着きました。そして、代わる代わる、自分のお嫁になれなれと言いましたが、媛《ひめ》はそれをいちいちはねつけて、
「いえいえ、いくらお言いになりましても、あなたがたのご自由にはなりません。私は、あそこにいらっしゃる大国主神のお嫁にしていただくのです」と申しました。
八十神たちはそれを聞くとたいそう怒《おこ》って、みんなで大国主神を殺してしまおうという相談をきめました。
みんなは、大国主神を、伯耆《ほうき》の国の手間《てま》の山という山の下へつれて行って、
「この山には赤いいのししがいる。これからわしたちが山の上からそのいのししを追いおろすから、おまえは下にいてつかまえろ。へたをして遁《に》がしたらおまえを殺してしまうぞ」と、言いわたしました。そして急いで、山の上へかけあがって、さかんにたき火をこしらえて、その火の中で
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