いとはやしたてますと、いちばんしまいにおりましたわにが、むっと怒《おこ》って、いきなり私をつかまえまして、このとおりにすっかりきものをひっぺがしてしまいました。
 そこであすこのところへ伏《ふ》しころんで泣《な》いておりましたら、さきほどここをお通りになりました八十神《やそがみ》たちが、いいことを教えてやろう、これこれこうしてみろとおっしゃいましたので、そのとおりに潮水《しおみず》を浴びて風に吹かれておりますと、からだじゅうの皮がこわばって、こんなにびりびり裂《さ》けてしまいました」
 こう言って、うさぎはまたおんおん泣きだしました。
 大国主神《おおくにぬしのかみ》は、話を聞いてかわいそうだとおぼしめして、
「それでは早くあすこの川口へ行って、ま水でからだじゅうをよく洗って、そこいらにあるかばの花をむしって、それを下に敷いて寝《ね》ころんでいてごらん。そうすれば、ちゃんともとのとおりになおるから」
 こう言って、教えておやりになりました。うさぎはそれを聞くとたいそう喜んでお礼を申しました。そしてそのあとで言いました。
「あんなお人の悪い八十神《やそがみ》たちは、けっして八上媛《やがみ
前へ 次へ
全242ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング