へおうかがいいたしました。すると天皇は、
「そちはなんという老婆《ろうば》だ。どういうことでまいったのか」とおたずねになりました。赤猪子《あかいのこ》は、
「私は、いついつの年のこれこれの月に、これこれこういうおおせをこうむりましたものでございます。こんにちまでお召《め》しをお待ち申してとうとう何十年という年を過《す》ごしました。もはやこんな老婆《ろうば》になりましたので、もとよりご奉公《ほうこう》には堪《た》えられませんが、ただ私がどこまでもおおせを守《まも》っておりましたことだけを申しあげたいと存じましてわざわざおうかがいいたしました」と申しあげました。天皇《てんのう》はそれをお聞きになって、びっくりなさいました。
「私《わし》はそのことは、もうとっくに忘《わす》れてしまっていた。これはこれはすまないことをした。かわいそうに」とおっしゃって、二つのお歌をお歌いになり、それでもって、赤猪子《あかいのこ》のどこまでも正直《しょうじき》な心根《こころね》をおほめになり、ご自分のために、とうとう一生お嫁《よめ》にも行かないで過ごしたことをしみじみおあわれみになりました。赤猪子《あかいのこ》
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