にいさまをさしおいてお位にのぼるなぞということは、私にはとてもできません。どうぞお許しくださいとおっしゃって、どこまでもお兄上の命《みこと》のお顔をお立てになろうとなさいました。
 しかし命は命で、いかなることがあっても、お父上のお言いつけにそむくことはできないとお言いとおしになり、長い間お二人でお互《たが》いに譲《ゆず》り合っていらっしゃいました。
 そのときある海人《あま》が、天皇へ献上《けんじょう》する物を持ってのぼって来ました。
 その海人が、大雀命《おおささぎのみこと》のところへ伺《うかが》いますと、命《みこと》は、それは若郎子皇子《わかいらつこおうじ》に奉《たてまつ》れ、あの方が天皇でいらっしゃるとおっしゃって、お受けつけになりませんし、それではと言って皇子の方へうかがえば、それはお兄上の方へ献《けん》ぜよとおおせになりました。
 海人《あま》はあっちへ行ったり、こっちへ来たり、それが二度や三度ではなかったので、とうとう行ったり来たりにくたびれて、しまいにはおんおん泣《な》きだしてしまいました。そのために、「海人ではないが、自分のものをもてあまして泣く」ということわざさえで
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