近江《おうみ》を越《こ》えて来たものか。
わしもその近江《おうみ》から来て、
木幡《こばた》の村でおまえに会った。
おまえの後姿《うしろすがた》は、
盾《たて》のようにすらりとしている。
おまえのきれいな歯並《はなみ》は、
しいの実《み》のように白く光っている。
顔には九邇坂《わにざか》の土を、
そこの土は、
上土《うわつち》は赤く、
底土《そこつち》は赤黒いけれど、
中土《なかつち》の、
ちょうど色のよいのを
眉墨《まゆずみ》にして、
色|濃《こ》く眉《まゆ》をかいている。
おまえはほんとうにきれいな子だ。
とこういう意味のお歌を歌っておほめになりました。
天皇は、この美しい矢河枝媛《やかわえひめ》を、後にお妃《きさき》にお召《め》しになりました。このお妃から、宇治若郎子《うじのわかいらつこ》とおっしゃる皇子がお生まれになりました。
天皇には、すべてで、皇子が十一人、皇女が十五人おありになりました。
その中で、天皇は、矢河枝媛《やかわえひめ》のお生み申した若郎子皇子《わかいらつこおうじ》を、いちばんかわいくおぼしめ
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