てこんなところへはいって来たのだ。きっと人に隠《かく》れてそのうしも殺して食おうというのであろう」と言いながら、いきなり農夫をつかまえてろうやへつれて行こうとしました。農夫は、
「いえいえ私はけっしてこのうしを殺そうなどとするのではございません。ただこうして百姓《ひゃくしょう》たちのたべ物を運んでまいりますだけでございます」と、ほんとうのままを話しました。それでも王子は、
「いやいや、うそだ」と言って、なかなかゆるしてくれないので、農夫は腰《こし》につけている例の赤い玉を出して、それを王子にあげて、やっとのことで放してもらいました。
 王子はその玉をおうちへ持って帰って、床《とこ》の間に置いておきました。すると赤い玉が、ふいに一人の美しい娘になりました。王子はその娘を自分のお嫁《よめ》にもらいました。
 そのお嫁は、いつもいろいろの珍《めずら》しいお料理をこしらえて、王子に食べさせていましたが、王子はだんだんにわがままを出して、しまいにはお嫁をひどくののしりとばすようになりました。
 するとお嫁のほうではとうとうたまりかねて、
「私《わたし》はもうこれぎり親たちの国へ帰ってしまいます。
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