えすこともできなくなってしまいました。
そのとき命がおつれになっていたお召使《めしつかい》の弟橘媛《おとたちばなひめ》は、
「これはきっと海の神のたたりに相違ございません。私があなたのお身代わりになりまして、海の神をなだめましょう。あなたはどうぞ天皇のお言いつけをおしとげくださいまして、めでたくあちらへおかえりくださいまし」と言いながら、すげの畳《たたみ》を八|枚《まい》、皮畳《かわだたみ》を六枚に、絹畳《きぬだたみ》を八枚|重《かさ》ねて、波の上に投げおろさせるやいなや、身をひるがえして、その上へ飛びおりました。
大波《おおなみ》は見るまに、たちまち媛《ひめ》を巻《ま》きこんでしまいました。するとそれといっしょに、今まで荒れ狂っていた海が、ふいにぱったりと静まって、急に穏《おだや》かななぎになってきました。
命はそのおかげでようやく船を進めて、上総《かずさ》の岸へ無事にお着きになることができました。
それから七日目に、橘媛《たちばなひめ》のくしがこちらの浜へうちあげられました。命はそのくしを拾わせて、あわれな媛《ひめ》のためにお墓をお作らせになりました。
橘媛《たちばなひめ
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