するのだ」とお聞きになりました。すると皇后は、
「それには、丹波《たんば》の道能宇斯王《みちのうしのみこ》の子に、兄媛《えひめ》、弟媛《おとひめ》というきょうだいの娘《むすめ》がございます。これならば家柄《いえがら》も正しい女たちでございますから、どうかその二人をお召《め》しなさいまし」とおっしゃいました。
 天皇はもういよいよしかたなしに、一気にとりでを攻め落として、沙本毘古《さほひこ》を殺させておしまいになりました。
 皇后も、それといっしょに、えんえんと燃えあがる火の中に飛びこんでおしまいになりました。

       三

 お母上のない本牟智別王《ほむちわけのみこ》は、それでもおしあわせに、ずんずんじょうぶにご成長になりました。
 天皇はこの皇子のために、わざわざ尾張《おわり》の相津《あいず》というところにある、二またになった大きなすぎの木をお切らせになって、それをそのままくって二またの丸木船《まるきぶね》をお作らせになりました。そして、はるばると大和《やまと》まで運ばせて、市師《いちし》の池という池にお浮《う》かべになり、その中へごいっしょにお乗りになって、皇子をお遊ばせに
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