て、お腕へ三重《みえ》にお巻きつけになり、お召物《めしもの》もわざわざ酒で腐らしたのをおめしになって、それともなげに皇子を抱《かか》えて、とりでの外へお出ましになりました。
 待ちかまえていた勇士たちは、そのお子さまをお受け取り申すといっしょに、皇后をも奪い取ろうとして、すばやく飛びかかってお髪《ぐし》をひっつかみますと、髪はたちまちすらりとぬげ落ちてしまいました。
「おや、しまった」と、こんどはお手をつかみますと、そのお手の玉飾りの緒《ひも》もぷつりと切れたので、難《なん》なくお手をすり抜《ぬ》いてお逃《に》げになりました。こちらはまたあわてて追いすがりながら、ぐいとお召物をつかまえました。すると、それもたちまちぼろりとちぎれてしまいました。その間に皇后は、さっと中へ逃げこんでおしまいになりました。
 勇士どもはしかたなしに、皇子一人をお抱《かか》え申して、しおしおと帰ってまいりました。
 天皇はそれらの者たちから、
「お髪《ぐし》をつかめばお髪がはなれ、玉の緒《ひも》もお召物《めしもの》も、みんなぷすぷす切れて、とうとうおとりにがし申しました」とお聞きになりますと、それはそれはたい
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