さすがにおいたわしくて、どうしてもお手をおくだしになることができませんでした。そしてとうとう悲しさに堪《た》えきれないで、おんおんお泣《な》きだしになりました。
その涙《なみだ》が天皇のお顔にかかって流れ落ちました。天皇はそれといっしょに、ひょいとお目ざめになって、
「おれは今きたいな夢を見た。沙本《さほ》の村の方からにわかに大雨が降って来て、おれの顔にぬれかかった。それから、にしき色の小さなへびがおれの首へ巻きついた。いったいこんな夢はなんの兆《しるし》であろう」と、皇后に向かっておたずねになりました。皇后はそうおっしゃられると、ぎくりとなすって、これはとても隠《かく》しきれないとお思いになったので、おあにいさまとお二人のおそれ多いたくらみをすっかり白状しておしまいになりました。
天皇はそれをお聞きになると、びっくりなすって、
「いやそれは危くばかな目を見るところであった」とおっしゃりながら、すぐに軍勢をお集めになって、沙本毘古《さほひこ》を討《う》ちとりにおつかわしになりました。
すると沙本毘古《さほひこ》のほうでは、いねたばをぐるりと積みあげて、それでとりでをこしらえて、ち
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