かにわしの子だ」とおっしゃいました。そして改めて少名毘古那神に向かって、
「おまえは大国主神ときょうだいになって二人で国々を開き固《かた》めて行け」とおおせつけになりました。
 大国主神は、そのお言葉に従って、少名毘古那神《すくなびこなのかみ》とお二人で、だんだんに国を作り開いておゆきになりました。ところが、少名毘古那神《すくなびこなのかみ》は、あとになると、急に常世国《とこよのくに》という、海の向こうの遠い国へ行っておしまいになりました。
 大国主神《おおくにぬしのかみ》はがっかりなすって、私《わたし》一人では、とても思いどおりに国を開いてゆくことはできない、だれか力を添《そ》えてくれる神はいないものかと言って、たいそうしおれていらっしゃいました。
 するとちょうどそのとき、一人の神さまが、海の上一面にきらきらと光を放《はな》ちながら、こちらへ向かって近づいていらっしゃいました。それは須佐之男命《すさのおのみこと》のお子の大年神《おおとしのかみ》というお方でした。その神が、大国主神に向かって、
「私をよく大事にまつっておくれなら、いっしょになって国を作りかためてあげよう。おまえさん一人ではとてもできはしない」と、こう言ってくださいました。
「それではどんなふうにおまつり申せばいいのでございますか」とお聞きになりますと、
「大和《やまと》の御諸《みもろ》の山の上にまつってくれればよい」とおっしゃいました。
 大国主神はお言葉《ことば》のとおりに、そこへおまつりして、その神さまと二人でまただんだんに国を広げておゆきになりました。
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 きじのお使《つか》い

       一

 そのうちに大空の天照大神《あまてらすおおかみ》は、お子さまの天忍穂耳命《あめのおしほみみのみこと》に向かって、
「下界に見える、あの豊葦原水穂国《とよあしはらのみずほのくに》は、おまえが治めるべき国である」とおっしゃって、すぐにくだって行くように、お言いつけになりました。命《みこと》はかしこまっておりていらっしゃいました。しかし天《あめ》の浮橋《うきはし》の上までおいでになって、そこからお見おろしになりますと、下では勢いの強い神たちが、てんでんに暴《あば》れまわって、大さわぎをしているのが見えました。命は急いでひきかえしていらしって、そのことを大神にお話しになりました。
 それで大神と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とは、さっそく天安河《あめのやすのかわ》の河原に、おおぜいの神々をすっかりお召《め》し集めになって、
「あの水穂国《みずほのくに》は、私たちの子孫《しそん》が治めるはずの国であるのに、今あすこには、悪強い神たちが勢い鋭く荒れまわっている。あの神たちを、おとなしくこちらの言うとおりにさせるには、いったいだれを使いにやったものであろう」とこうおっしゃって、みんなにご相談をなさいました。
 すると例のいちばん考え深い思金神《おもいかねのかみ》が、みんなと会議をして、
「それには天菩比神《あめのほひのかみ》をおつかわしになりますがよろしゅうございましょう」と申しあげました。そこで大神は、さっそくその菩比神《ほひのかみ》をおくだしになりました。
 ところが菩比神《ほひのかみ》は、下界へつくと、それなり大国主神《おおくにぬしのかみ》の手下になってしまって、三年たっても、大空へはなんのご返事もいたしませんでした。
 それで大神と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とは、またおおぜいの神々をお召《め》しになって、
「菩比神《ほひのかみ》がまだ帰ってこないが、こんどはだれをやったらよいであろう」と、おたずねになりました。
 思金神《おもいかねのかみ》は、
「それでは、天津国玉神《あまつくにたまのかみ》の子の、天若日子《あめのわかひこ》がよろしゅうございましょう」と、お答え申しました。
 大神はその言葉《ことば》に従って、天若日子《あめのわかひこ》にりっぱな弓《ゆみ》と矢《や》をお授けになって、それを持たせて下界へおくだしになりました。
 するとその若日子は大空にちゃんとほんとうのお嫁《よめ》があるのに、下へおり着くといっしょに、大国主神《おおくにぬしのかみ》の娘《むすめ》の下照比売《したてるひめ》をまたお嫁にもらったばかりか、ゆくゆくは水穂国《みずほのくに》を自分が取ってしまおうという腹《はら》で、とうとう八年たっても大神の方へはてんでご返事にも帰りませんでした。
 大神と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とは、また神々をお集めになって、
「二度めにつかわした天若日子もまたとうとう帰ってこない。いったいどうしてこんなにいつまでも下界にいるのか、それを責《せ》めただしてこさせたいと思うが、だれをやったものであろう」とお聞きになりました。
 思金神《おもい
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