親もおどろいて出て見ました。上から下まできれいな彫り飾りがついたりしていて、ウイリイたちのぼろぼろの家と比べると、小さいながら、まるで御殿のように立派な家でした。
 ところが、その家には窓が一つもなくて、ただ屋根の下の、高いところに戸口がたった一つついているきりです。その戸口には錠《じょう》がかかっています。双親《ふたおや》は、どうしてこんな家がひょっこり建ったのだろうとふしぎでたまりませんでした。ウイリイは、
「これはきっといつかのおじいさんが私にくれた贈物にちがいない。」こう言って、ポケットから例の鍵を出して、戸口の鍵穴《かぎあな》へはめて見ますと、ちょうどぴったり合って、戸がすらりと開《あ》きました。
 ウイリイはすぐに中へはいって見ました。すると、その中には、きれいな、小さな灰色の馬が、おとなしく立っていました。ちゃんと立派な鞍《くら》や手綱《たづな》がついていて、そのまま乗れるようになっているのです。そのそばの壁には、こしらえたばかりの立派な服が、上下《うえした》そろえて釘《くぎ》にかけてありました。
 ウイリイは、さっそく、その服を着て見ました。そうすると、まるで、じぶんの
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