は来ませんでした。
ウイリイは丈夫に大きくなりました。それに大へんすなおな子で、ちっとも手がかかりませんでした。
ふた親は乞食のじいさんがおいていった鍵を、一こう大事にしないで、そこいらへ、ほうり出しておきました。それをウイリイが玩具《おもちゃ》にして、しまいにどこかへなくして来ました。
ウイリイはだんだんに、力の強い大きな子になって、父親の畠《はたけ》仕事を手伝いました。
或ときウイリイが、こやしを車につんでいますと、その中から、まっ赤《か》にさびついた、小さな鍵が出て来ました。ウイリイはそれを母親に見せました。それは、先《せん》に乞食のじいさんがおいて行った鍵でした。母親はじいさんの言ったことを思い出して、はじめて、ウイリイに話をして聞かせました。それからは、ウイリイはその鍵をいつもポケットにしまって、大事に持っていました。
そのうちに、ウイリイの十四の誕生《たんじょう》が来ました。ウイリイは、その朝早く起きて窓の外を見ますと、家《うち》の戸口のまん前に、昨日《きのう》までそんなものは何《なん》にもなかったのに、いつのまにか、きれいな小さな家《いえ》が出来ていました。ふた
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