ました。それにはずいぶん沢山の日数《ひかず》がかかりました。
ウイリイは馬のところへ行って、船が出来たと知らせました。そうすると馬は、
「それでは王さまにお願いして、肉とパンとうじ[#「うじ」に傍点]虫を百|樽《たる》ずつ用意しておもらいなさい。そのほかにその樽を二つずつはこぶ車が百だい、その車を引っぱる革綱《かわづな》も二百本いります。それから水夫を二百人集めておもらいなさい。」と言いました。
ウイリイはそれをすっかりととのえてもらって、船へつみこみました。二百人の水夫も乗りこみました。馬は、
「もうこれでいいから、しまいに大麦を一俵|私《わたし》に下さい。そしてこの手綱《たづな》をゆるめておいて、すぐに船へお乗りなさい。」と言いました。
ウイリイは馬のいうとおりにして、船へ乗りました。そして今にも岸をはなれようとしていますと、馬は、ふいに白いむく[#「むく」に傍点]犬になって、いきなり船へ飛び乗り、ウイリイの足もとへしゃがみました。ウイリイはこれから長い間、海や岡をいくのにちょうどいい友だちが出来たと思って喜びました。
船は追手《おいて》の風で浪《なみ》の上をすらすらと走って、間もなく大きな大海《おおうみ》の真中《まんなか》へ出ました。
そうすると、さっきのむく[#「むく」に傍点]犬が、用意してある百樽のうじ虫をみんな魚におやりなさいと言いました。ウイリイはすぐに樽をあけて、うじ虫をすっかり海へ投げこみました。犬は、その空樽《あきだる》を鯨におやりなさいと言いました。ウイリイはそれも片はしからなげてやりました。
魚《さかな》たちは、思わぬ御馳走《ごちそう》をもらったので、大よろこびで、みんなで寄って来て、おいしい/\と言って食べました。鯨もすっかり出て来て、樽を一つずつひろって、それをまり[#「まり」に傍点]にして、大よろこびで遊びました。
船は、それから、どん/\どん/\どこまでも走って、しまいに世界のはての陸地へつきました。
ウイリイは船から上《あが》ると、百だいの車へ、百樽の肉とパンとをつませて、二百|本《ぽん》の革綱をつけてそれを二百人の水夫に、二人ずつで引かせて進んでいきました。
すると、向うの方で、大ぜいの狼《おおかみ》と大ぜいの熊《くま》とが食べものに飢《かつ》えて大げんかをしていました。みんなが牙《きば》をむき爪《つめ》を立ててかみ合いかき合いしているので、ウイリイたちはそこをとおることができませんでした。
ウイリイはそれを見て車から百樽の肉を下《おろ》して投げてやりました。みんなは喜んですぐにけんかをやめてとおしてくれました。
それからまたどんどんいきますと、今度はおおぜいの大男が、これも食べものに飢《かつ》えて、たった一とかたまりのパンを奪い合って、恐ろしい大げんかをしていました。ウイリイは気をきかせて、すぐに百樽のパンをやりました。大男たちは大そうよろこんで、ぺこぺこおじぎをしました。
「私たちはちょうど百年の間けんかをしていたのです。おかげでやっと食べものが口にはいります。このお礼にはどんなことでもいたしますから、御用がおありでしたら仰《おっしゃ》って下さい。」と言いました。
ウイリイはそこから水夫たちをみんな船へ帰して、今度は犬と二人きりで進んで、いきました。
そうすると、ずっと向うの方に、きれいなお城がきらきらと日に光っていました。犬は、
「このへんでしばらく待っていらっしゃい。あのお城のぐるりには毒蛇《どくじゃ》と竜《りゅう》が一ぱいいて、そばへ来るものをみんな殺してしまいます。しかし、その毒蛇も竜も、日中《にっちゅう》一ばん暑いときに三時間だけ寝ますから、そのときをねらって、こっそりとおりぬければ大丈夫です。」と言いました。ウイリイはそのとおりにして、犬と一しょに、無事に城の中へはいりました。
城の門も、中の方々の戸も、すっかり明け放してありました。
四
ウイリイは犬を外に待たせておいて、大きな部屋をいくつも通りぬけて、一ばん奥の部屋にはいりますと、そこに、金色をした鳥が一ぴき、すやすやと眠っていました。その鳥の羽根は、ウイリイが先《せん》にひろった羽根と同《おんな》じ羽根でした。ウイリイは、犬から教《おそ》わっていたので、そっとその鳥のそばへ行って、しっぽについている、一ばん長い羽根を引きぬきました。
鳥はびっくりして目をあけたと思うと、ふいに一人の美しい王女になりました。それが羽根の画の王女でした。
「あなたは私の熊と狼のそばをよくとおりぬけて来ましたね。」と王女が言いました。
「肉をどっさりやりましたら、とおしてくれました。」とウイリイは答えました。
「それでは私の大男のいるところはどうしてとおりぬけたのです。」と王女は聞きました。
「
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