デイモンとピシアス
鈴木三重吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)希臘《ギリシヤ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎朝|髪剃《かみそ》りをあてる
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一
これは、二千年も、もっとまえに、希臘《ギリシヤ》が地中海ですっかり幅《はば》を利《き》かせていた時代のお話です。
そのころ、希臘人は、今のイタリヤのシシリイ島へ入り込んで、その東の海岸にシラキュースという町をつくっていました。そこでも市民たちは、やはりみんなの間からいくたりかの議政官というものを選んで、その人たちにすべての支配を任せていました。或《ある》とき、その議政官の一人にディオニシアスという大層な腕ききがいました。
ディオニシアスは、もとはずっと下級の役に使われていた人ですが、その持前《もちまえ》の才能一つで、とうとう議政官の位地まで上ったのでした。この人のおかげでシラキュースは急にどんどんお金持になり、島中のほかの殖民地に比べて、一ばん勢力のある町になりました。
それらの殖民地の中には、アフリカのカーセイジ人が建てた町もいくつかありました。シラキュ
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