ゐました。お父さまはそのときぽつぽに言ひました。
「二人ともおとなしくして乗つてお出《い》で。こんどは海の見えるお家《うち》へいくんですよ。」と言ひました。
「そして、そのお家《うち》へ、小ちやなすゞ[#「すゞ」に傍点]ちやんが生れて来るのですよ。」と、小石川《こいしかは》のお祖母《ばあ》ちやまがそつと二人におつしやいました。ぽつぽは、
「お祖母さま、お祖母さま、そのすゞちやんといふのはだれでございます。」と聞きました。
お母さまは、だまつて、たゞかるくわらひながら、みんなと一しよに車に乗りました。
ぽつぽは、それからこんどのお家《うち》へつきました。そのじぶんには、すゞ子の曾祖母《ばあばあ》は、まだ玉木《たまき》の大叔母《おばあ》ちやんのところにいらつしやいました。あき子|叔母《をば》ちやんもまだ来てゐませんでした。おうちには、千代《ちよ》といふ小さな女中がゐました。
ぽつぽは、せんとおなじやうに、お部屋のそとの、ガラス戸のところにおかれました。このお家《うち》は、おもてからはいつて来ると、たゞの平家でしたけれど、上へ上つて、がらす戸のところへいつて見ると、そのお部屋のま下が広
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