に、仕合せをさがして歩いているのだから。」と、聞いて見ました。するとぶくぶくはよろこんで、
「どうぞおともにつけて下さいまし。何よりの仕合せでございます。」と言って、すぐに家来《けらい》になりました。
 二人はそれからしばらく、てくてく歩いていきますと、こんどは向うから、まるで棒のようにやせた、ひょろ長い男が出て来ました。王子は、
「おや、へんなやつが来たぞ。」と思いながらそばへいって、
「もしもし、おまえさんはどこまでいくのです。」と聞きました。
「私は世界中を歩くのです。」と、その棒が言いました。
「一たいおまえさんは何商ばいです。」と王子は聞きました。
「私には商ばいはありません。ただ人の出来ないことが、たった一つ出来るだけでございます。私の名前は長々《ながなが》と申します。私がちょいと、こう爪《つま》立《だ》ちをしますと、すうッと天まで手がとどきます。それから一と足で一里さきまでまたげます。このとおりです。」
 棒はこう言うが早いか、たちまちするするとからだをのばして、おやッという間《ま》に、もう高い高い雲の中へ頭をつっこんでしまいました。そして、ひょい/\/\と五足六足《いつ
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