でかけて来ました。するとみんなは火の子のようにあわて切っているものですから、ぶくぶくの大きな口を町の入口の門とまちがえて、片はしからどん/\どん/\その口の中へとびこみました。ぶくぶくはその何千人という兵たいがすっかりお腹《なか》の中へはいってしまうと、
「ははは。これでよし。」と笑いながら、そのままのそりのそりと町の方へ歩いていきました。
ぶくぶくはそれだけの兵たいを馬ぐるみお腹へ入れたのですから、少し歩き悪《にく》くはありましたが、それでも大またにのこのこと歩いて町へはいりました。
町|中《じゅう》では王子がうまく寝ずの番をして、世界一のりっぱな王女をお嫁にもらってかえって来たというので、みんな大よろこびで、おどりさわぎました。王子はぶくぶくの姿を見ると、
「おお、かえったか。あの兵たいたちはどうした。」と聞きました。ぶくぶくはにたにた笑いながら大きなお腹《なか》をぽんとたたいて、
「このとおりでございます。みんなこの中へ入れてしまいました。」と言いました。王子は、はっはと笑って、
「もういいから出しておやりよ。」と言いました。
「そうですね。兵たいや馬はこなれがわるいでしょう
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