。」と王子は言いました。
「はいはい、どうぞおねがいいたします。」と、その男も家来になりました。この男は火《ひ》の目《め》小僧《こぞう》という名まえでした。
三
王子はこんなめずらしい男を三人まで家来にかかえたので、大《だい》とくいになって、どんどん歩いていきました。そのかわりこれまでとちがって、三人をやしなうのに、大そうなお金がかかりました。だって火の目小僧と長々《ながなが》の二人は、ただあたりまえの人が食べるだけしか食べませんでしたが、もう一人のぶくぶくは、お腹《なか》がいくらでもひろがるので食べるも/\一どに牛肉の千貫目やパンの千本ぐらいは、どこへ入ったかわからないくらいです。そんな男に腹一ぱい食べさすには、とても一とおりのお金ではすみません。しかし王子は、ちっともいやな顔をしないで、食べたいだけ食べさせてどんどんお金をはらいました。
そのうちにやっとれいの王女のいる町へ着きました。王子はそのときはじめて、じぶんがはるばるここまで出て来たわけを三人に話して聞かせました。そしてどうか三晩とも眠らないで番をしとおしたいものだ、そしてうまく王女をお嫁にもらったら、おまえたちにはどっさりほうびをやるといいました。三人は、それを聞いて、
「これまでだれにも出来なかったことをして見せれば、第一世界中の人にもいばれます。私たちも一しょうけんめいにお手つだいいたします。」と、勇み立って言いました。
王子は三人にりっぱな着物を買って着せました。そして夜になると、みんなをつれて王さまの御殿へいって、どうか私に、王女さまの番をさせて下さいましと申しこみました。
王さまはこころよく王子と家来とを一《ひ》と間《ま》におとおしになりました。
王子はそのまえに、三人に向って、どんなことがあっても、私がだれだということは人にしゃべらないように、それから三人が、いざというと、じきにすらすらのびたり、ぶくぶくふくれたり、火をふいたりすることも、かたくひみつ[#「ひみつ」に傍点]にしておくように言いふくめておきました。
王さまは王子に向って、
「もしうっかりい眠りをして、王女を部屋からにがすと、おまえたち四人の命を取るがそれでもいいか。」と、ねんをおおしになりました。
「それはしょうちしております。」と王子は答えました。
王さまは、よせばいいのにと言わないばかりにに
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