に、仕合せをさがして歩いているのだから。」と、聞いて見ました。するとぶくぶくはよろこんで、
「どうぞおともにつけて下さいまし。何よりの仕合せでございます。」と言って、すぐに家来《けらい》になりました。
二人はそれからしばらく、てくてく歩いていきますと、こんどは向うから、まるで棒のようにやせた、ひょろ長い男が出て来ました。王子は、
「おや、へんなやつが来たぞ。」と思いながらそばへいって、
「もしもし、おまえさんはどこまでいくのです。」と聞きました。
「私は世界中を歩くのです。」と、その棒が言いました。
「一たいおまえさんは何商ばいです。」と王子は聞きました。
「私には商ばいはありません。ただ人の出来ないことが、たった一つ出来るだけでございます。私の名前は長々《ながなが》と申します。私がちょいと、こう爪《つま》立《だ》ちをしますと、すうッと天まで手がとどきます。それから一と足で一里さきまでまたげます。このとおりです。」
棒はこう言うが早いか、たちまちするするとからだをのばして、おやッという間《ま》に、もう高い高い雲の中へ頭をつっこんでしまいました。そして、ひょい/\/\と五足六足《いつあしむあし》歩いたと思いますともう五、六里向うへとんでいました。それからまたひょい/\/\と、またたく間《ま》に目の前へかえって来ました。王子は、
「いや、これは便利な男がいたものだ。」と、すっかりかんしんして、
「これから私のお供になってくれないか。」と言いました。
「へいへい、それはねがってもない幸《さいわい》でございます。」と、棒は大喜びで、すぐに家来になりました。王子は二人をつれて、またどんどんいきました。そして間もなく、ある大きな森の中へ来ました。
するとそこに、だれだか一人の男がいて、ぐるりの大きな木を片ッぱしからひきぬいては、どんどんつみ上げていました。
王子は、
「もしもし、それをつみ上げてどうするのです。」と聞きました。
するとその男は、
「なァに、ただ目から火をふいて、この丸太を一どきにもやすんです。」と言いながら、じっと目をすえて、その山のようにつみかさねた木をにらみつけました。すると、両方の目の中から、しゅうしゅうと、長い焔《ほのお》がふき出て、それだけの丸太をまたたく間に灰にしてしまいました。
「ほほう、これはすばらしい。どうです。私のお供になりませんか
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