それから、だんなさまのところのクリスマスのおかざりの、金いろのクルミをすこしとつておいてください。そして、それを、わたしの青い箱にしまつておいてください。おぢようさんがきかれたら、ユウコフにやるんだからつて、さういつてください。」
ユウコフは又ためいきをついて、窓を見上げました。すると、こんどは、だんなと二人で、森へクリスマスの飾木をとりにいつたときのことが、ガラスの中にみえてきました。
その日はいゝお天気でした。だんなは、をのをかついで、雪の上を、ぜい/\ふう/\いひながら、あるいていきます。すると雪もぜい/\ふう/\ときしみます。そこでユウコフも、わざとぜい/\ふう/\いひながらついていきました。
飾りにする木をきりたほすまへに、だんなは、まづパイプで一服して、それから、かぎ煙草をゆつくりかいで、にこ/\しながら、どの木をきらうかとみまはします。雪につゝまれた若いもみの木は、ぢつと立つたまゝ、じぶんが切られやしないかと、心配してゐるやうです。と、そのとき、矢のやうに、雪の上をとんだものがありました。うさぎです。
「まてッ。」と、だんなは、どなりながらおひかけます。
「まてつた
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