のしいうたをうたふ森の鳥をでもころします。そんなものたちこそ、かたつむりなんかより、よつぽどおもしろい動物で、そして、わるぎなんてものはちつとももつてはゐません。それでも人はそれをみんな殺すのです。だから、このかたつむりだつて……
 トゥロットはなげつけて足でふみつぶさうとして、手をふりあげました。でも、やつぱり手をおろしました。手の中にはから[#「から」に傍点]をにぎつてゐるのです。
 さうだ、人はよくどんな動物でも殺すけれど、それは食べるために殺すのだ。人間のためにいるから殺すのだ。せんにお父さまは、よそのいたづらつ子が、ぱちんこ[#「ぱちんこ」に傍点]で小鳥をうちおとしたときに、その子の耳をおひつぱりになつたことがある。お父さまは、たいそうおおこりになつた。でも小鳥はくだものをつッつきます。羊だつて牛だつて草をたべたり、きれいな花をむしつて食べたりします。いつかもめ[#「め」に傍点]牛が、一どにマーガレットの花を五十ばかりもひつこぬいたことがあります。しかし、そのくらゐのことでその牛を殺していゝかしら。
 トゥロットは、あゝでもない、かうでもないと、こねくりかへしてかんがへたあげ
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