、手の中のかたつむりを見つめました。足でつぶす……ふう、このから[#「から」に傍点]が、ぐしやりとなるのをかんがへるだけでも、こいつの肉が、くつの底でぐちや/\になるのをかんがへるだけでも、むねがわるくなつて来ます。あゝ、井戸の中へなげこまうかしら。さうだ。その方がよつぽどましだ。
二
トゥロットはさうしようときめかけました。しかし、それも何だか気がひけます。だつて、あはれなこのかたつむりは、何もわるいことをしたわけではありません。こいつは植物の葉なぞの上をうごいて、日光をあびて、ぐるりと一まはりして来て、お食事をするのがたのしみなのです。きつとさうです、でも、バラを食べる。バラに害をする。やつぱり、ばつしてやらなければいけない。
しかし、だれだつてものを食べます。このかたつむりだつて、バラの上をはひまはつてゐるのは悪気があつてではありません。おなかゞすいてゐるからです。からだをやしなはなければならないからです。それをばつしるといふのはひどいやうです。
でも人は、を[#「を」に傍点]牛や羊や小羊を殺します。あんなに、かなしい声でなく、かはいさうな小羊をも殺します。た
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