枚を繰っていた。
二
――われらがこの家を出《いで》たる時、日はいまだ昇らざりき。われらは鶉《うずら》を猟《あさ》らんがために、手に手に散弾銃をたずさえて、ただ一頭の犬をひけり。
最もよき場所は畔《あぜ》を越えたるところに在り、とモルガンは指さして教えたれば、われらは低き槲《かしわ》の林をゆき過ぎて、草むらに沿うて行きぬ。路の片側にはやや平らかなる土地ありて、野生の燕麦《からすむぎ》をもって深く掩《おお》われたり。われらが林を出《いで》て、モルガンは五、六ヤードも前進せる時、やや前方に当たれる右側のすこしく隔たりたるところに、獣《けもの》のたぐいが藪《やぶ》を突き進むがごときひびきを聞けり。その響きは突然に起こりて、草木のはげしく動揺するを見たり。
「われらは鹿を狩りいだしぬ。かくと知らば旋条銃《ライフル》を持ち来たるべかりしに……」と、われは言いぬ。
モルガンは歩みを停《と》めて、動揺する林を注意深く窺いいたり。彼は何事をも語らざりき。しかも、その銃の打ち金《がね》をあげて、何物をか狙うがごとくに身構えせり。焦眉《しょうび》の急がにわかに迫れる時にも、彼は甚《
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