ゥに自覺することなく、實體を示す言葉と虚體を示す言葉とを混同して用ゐる。その爲に話手と聞手とが同一の言葉を用ゐて居ても、各々が考へてゐる其の言葉の意味に食ひ違ひが生じたりして、思想交換の圓滑を缺き、我々の思想を混亂せしめる。然るに我々は此等の虚構の言葉を文學的なりとして寧ろ好んで使ふ傾向がある。これは言葉の魔力(magic of words)にかゝつてゐるのである。所謂哲學も其の多くは我々の言語習慣の反影に過ぎないものであり、その論爭も言語の幻影によつて生じたものである、とさへオグデン氏は言つてゐる。それで虚體を示す言葉の意味を分析して、より實體的で要素的な語の集りで、その意味を解明することが必要であり、又さうすることが英語に於いて可能であることに着眼したのが氏の解釋學の重要な部分であり、又同時に Basic English の考案の主なる基礎を成してゐるのである。
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          ※[#ローマ数字3、1−13−23]. 語彙制限の諸原則

            1. 動詞の排除

 言葉の中で最も虚構的であつて、收縮的な性質を持ち、謂はゞ、速記記號の如きものは
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