撃フ或るものの前には 'un−' を附加して反對の意味の形容詞を作り得る。疑問文は語位の轉換又は 'do' を使ひ、動詞、代名詞の變化は普通の通りである。又850語を適當に組合せて得た平易な250個の慣用句を使用してもよい。度量衡、數詞、貨幣、暦詞及び諸國共通の語は英語に依る。又一般科學用語100と各種の科學、商業等の特別用語50とが用意されてある。
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※[#ローマ数字2、1−13−22]. 考案の起源と展開
さて茲に Basic English の組織せられるに至つた來歴を簡單に述べると、オグデン氏が1919年より1922年に亘つて、その名著 The Meaning of Meaning[#「The Meaning of Meaning」は斜体]*(「意味の意味」、リチャーヅ(I.A. Richards, 1893− ――)博士との共著)を執筆の頃に溯る。本書は、その副題を「言語の思想に及ぼす影響及び象徴學の研究」と言ひ、言語とは象徴(symbol)の一種であつて、其の意味とは象徴(記號)としての言語が事物を指示する作用である、と言ふ理論を詳述したもので、その言語、思想、事物の關係を論じた無底邊三角形(同書第一章)は有名である。即ち、事物と思想、思想と言語とは、それぞれ直接の關係を持つてゐるが、事物と言語とは間接の關係しか持つてゐない、と言ふのである。而して、此の三角形は多くの場合に底邊を持つてゐないことゝなる。即ちシムボルとしての言語と事物とを結合する線が缺けてゐることが多いのである。我々の日常用ゐる言葉の上に多くの錯誤が生じて來るのは、こゝに原因する。何故ならば、我々はシムボルと事物との間に直接の關係があるかのやうに思ひ込んでゐるのみならず、さう考へることが言葉を使用する時に便利であるとさへ思つてゐるからである。若し、我々が此の三角形に於いて、その底邊が缺けてゐるといふことを反省するならば、言語上の誤解が生ぜずにすむだらうと言ふのである。尚ほ此は本居宣長の「こと、こころ、ことば」の三角關係の學説及び富士谷御杖の學説と比較して垣内松三氏によつて研究されてゐる。
[#「書物、思想、言語(象徴)」を説明した無底辺三角形の図(fig18361_01.png)入る]
* 石橋幸太郎氏による此の書の第三版の完譯が昭和十一年に刊行せられた。
さて其頃オグデン氏がリチャーヅ氏等と共に、諸種の語(words)の意味の定義の研究調査に從事してゐた際、或る幾つかの要素的な語が常にその中に用ゐられることを發見し(尤も、この事は十七世紀に於いてライプニッツ(Leibnitz)やウィルキンズ(John Wilkins)等の興味を唆つた問題ではあつたが)、進んで此等の重要なる基本的語彙のみを以て、それ以外の多くの複雜なる内容を持つ語の意味を明瞭に言ひ表はし得ることに想到した。更に進んで、此等の要素的な語彙のみを以て一種の基本的な英語を構成することが出來るだらうといふことを考へて研究を續けた。斯くして、一般普通の思想の交換を容易ならしめる英語による國際語の考案は、當時既にオグデン氏の主なる關心事の一つであつたのである。併し、その當時にあつては、氏の此の試みの前途には多くの障碍が横はつてゐる樣に思はれた。例へば、假に十年餘を費して斯る國際補助語が考案されたとしても、實際それを用ゐるに當つて豫期以上の多くの困難が感ぜられるのではないかしら、又如何したら目や耳に普通の英語のやうな自然な印象を與へ得るものを作ることが出來るだらうか、といふことであつた。
ところが、やがてオグデン氏は此等の問題を解決する鍵を見出した。氏は兼ねて、ファイヒンガー(Hans Vaihinger, 1852−1933. ドイツの哲學者)の Die Philosophie des Als Ob[#「Die Philosophie des Als Ob」は斜体]1(The philosophy of 'As if')を讀み、1924年にその英譯2を刊行したのであるが、その頃より益々ベンタム(Jeremy Bentham, 1748−1832. 英國の法理及び倫理學者)の言語哲學の研究の必要を痛感し、熱心にベンタムを讀み始めた。當時オグデン氏は動詞(verbs)の性質の研究に當つてゐたが、ベンタムの言語觀から得た暗示によつて大いに力づけられて更に檢討を進めて、遂に所期の目的を達することが出來たのである。「Basic の考案の仕事の總ての段階に於いてベンタムの『虚構の理論』(Theory of Fictions)は極めて貴重なる助力を與へてくれた。所謂動詞組織を國際語といふ目的の爲には、解體し得るであらう、といふ考へに對するベンタムの支持が、少くとも
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