人は郵便局に行きました。そこもしまっています。
「ママお腹《なか》がすきました」
おかあさんはだまったままでした。子どもはなぜ日曜でもないのに店がしまって、そこいらに人がいないのかわかりませんでした。むすめは園丁《にわつくり》の所に行ってみましたが、そこもしまっていて、大きな犬が門の所に寝《ね》ころんでいるばかりでした。
「ママくたびれました」
「私もですよ、どこかで水を飲みましょうね」
で二人は家ごとをおとずれてみましたが、いずれもしめてありました。子どもはこの上歩く事はできません、足はつかれてびっこをひいていました。おかあさんはむすめの美しいからだが横に曲がったのを見ると、もうたまらないで、道のそばにすわって子どもを抱き取りました。子どもはすぐ寝入《ねい》ってしまいました。
その時鳩がライラックに来てとまって天国の歓喜と絶えせぬこの世の苦しみ悲しみを声美しく歌いました。
おかあさんはねむった子どものあお向いた顔を見おろしました。顔のまわりの白いレースがちょうど白百合《しらゆり》の花びらのようでした。それを見るとおかあさんは天国を胸《むね》に抱いてるように思いました。
ふと
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