、そして善知識になるがいいぞ。そうなったら、わしのところへ来て話して聞かしてくれ。なんといっても、あの世の様子が良く知っていさえすれば、そこへ行くのも楽なわけだからな。それに、おまえも、のんだくれの親爺や娘っ子どものそばにいるよりは、坊さんたちのところにいたほうが身のためだから……、せめておまえだけは、天使のように、なんにもさわらせたくないよ。いや、あすこへ行けば、おまえもさわるものがなかろう。わしがおまえに許しを与えるのも、つまりは、それを当てにするからなんだよ。おまえの心はまだ悪魔に食われておらんからな。ぱっと燃えて、消えて、それからすっかり以前のからだになって、帰って来るがいい。わしはおまえを待っておるぞ。実際、世界じゅうでこのわしを悪く言わないのは、ただおまえ一人きりだからな、それはわしも感じとるわい。本当に感じとるとも、実際、それを感じないわけにはいかんじゃないかえ?……」
そして、彼はすすりあげて泣きだしさえした。彼は感傷的であった。悪党ではあったが、同時に感傷的な人間でもあった。
五 長老
おそらく、読者の中にこの青年を、病的な、われを忘れてしまうほど感じや
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