が、わしも、いずれはおまえが、何かそんな風なことになるだろうとは、感づいておったのだよ。どうだ、思いがけなかったろうが? おまえは全くあすこをねらっておったんだからの。が、まあ、しかたがないさ、おまえも二千ルーブルという自分の金を持っておるのだから、あれがまあ、持参金になるってものだ。わしもけっしておまえを打っちゃっときゃあせんからな、今だって、寺で出せと言うだけのものは、おまえのために寄進するよ。だが、もし出せと言わなければ、なにもこっちから出しゃばったことをするにも当たるまいよ。そんなもんじゃないかえ? だって、おまえの金の使い方といえば、とんとカナリヤとおんなじで、一週間に二粒ずつもありゃたくさんだろうよ――ふむ……ときに、なんだな、あるお寺のことなんだが、そこにはちょっとした控え屋敷のようなものがあって、その中には、誰でも知っておることだが、『お囲い女房ばかりが住んでおる』のさ。なんでも三十匹ぐらいもいるらしいぞ……わしもそこへ行ったことがあるが、なかなかおもしろいわい。もちろん、一種特別な、変わっておるというだけのおもしろさなんだけれど、ただ惜しいことに、恐ろしい国粋主義で、
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