ほかには、何の説明もしていなかった。
「ああ、それはあなたとして本当に美しい、立派なことなのよ」不意にリーズは活気づいてこう叫んだ。「だって、あたしお母さんにそう言ってたのよ――あの人はどんなことがあっても行きゃしない。あの人はお寺で行をしてるんですものって。まあ本当に、あなたはなんという立派なかたなんでしょう! あたしね、いつもあなたを立派なかただと思っていたの。だから今そのことを言うのが、とてもいい気持なのよ!」
「リーズや!」と母夫人はたしなめるように言ったが、すぐににっこり笑った。
「あなたはすっかりわたしたちを忘れておしまいになったのね、アレクセイ・フョードロヴィッチ、あなたはちっとも宅へいらしてくださらないじゃありませんの。ところが、リーズはもう二度もわたしに向かって、あなたと御いっしょにいるときだけ気分がいいって申しましたのよ」アリョーシャは伏せていた眼をちょっと上げたが、また急にまっかになって、それからまた突然、自分でもなぜだかわからない微笑を浮かべた。けれども長老はもう彼を見守ってはいなかった。彼は、前に述べたとおり、リーズの椅子のかたわらで自分を待っていた、旅の僧と
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