いろんなことで御相談があるのでしょうよ」と母夫人はかいつまんで説明した。「カテーリナ・イワーノヴナは今ある決心をしていらっしゃいますの……けれど、そのためにぜひあなたにお目にかからなければならないんですって……どうしてですか? それはむろん、存じませんが、なんでも至急にってお頼みでしたよ。あなたもそうしておあげになるでしょう、きっと、そうしておあげになりますわね。だって、それはキリスト教的感情の命令ですもの」
「僕はあの人にはたった一度会ったきりですよ」と、アリョーシャは依然として合点のいかぬ様子でことばを続けた。
「ほんとにあのかたは高尚な、とてもまねもできないようなかたですわ!……あのかたの苦しみだけからいってもねえ……まあ、考えても御覧なさいな、あのかたがどんなに苦労をしていらっしたか、またどんなに苦労をしていらっしゃるか、そしてこの先どんなことがあのかたを待ち受けているか……ほんとに何もかも恐ろしいことですわ、恐ろしいことですわ!」
「よろしい、では僕まいりましょう」とアリョーシャはきっぱり言って、短い謎《なぞ》のような手紙にざっと眼を通して見たが、ぜひとも来てくれという依頼の
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