って参じましただ。ところがお目にかかってみれば、なんの御病気どころか、まだこのさき二十年でも生きなされますよ、本当に。どうか息災でいておくんなさりまし! それにおまえ様のことを祈っておる者は大ぜいありますだで、おまえ様がわずらいなどなされるはずがござりましねえだよ」
「いや、いろいろとありがとう」
「ついでに一つ、ちょっくらお願いがござりますだよ。そうら、ここに六十カペイカござりますだで、これを、わしより貧乏な女子衆にくれてやってくださりまし。ここへ来てから考えましただ、長老様に頼んで、渡しておもらい申したほうがええ、あの方は誰にやったらええか、よう御存じじゃから、となあ」
「ありがとうよ、かみさん、ありがとう。わしはそなたの美しい心がけが気に入った。必ずそのとおりにして進ぜよう。抱いておるのは娘かな?」
「娘でござります、長老様、リザヴェータと申しますだ」
「神様がそなたたちふたりに、そなたと稚《いとけ》ないリザヴェータとに祝福をたれたまわんことを。ああ、おっかさん、そなたのおかげで心が晴れ晴れしてきましたわい。ではさようなら、皆の衆、さようなら、大事な愛《いと》しい皆の衆!」 
 
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