よい名まえじゃ。アレクセイ尊者にあやかったのじゃな?」
「尊者でございます、神父様、アレクセイ尊者でございます!」
「それはなんという聖い子じゃ! 回向をして進ぜよう、回向をして進ぜるよ! それからそなたの悲しみも祈祷《きとう》の中に告げてあげようし、配偶《つれあい》の息災も祈ってあげよう。ただ、配偶《つれあい》を捨てておくのはそなたの罪になるのじゃ。帰ってめんどうを見てやりなされ。そなたが父親を見すてたのを天国から見たら、その子はそなたたちのことを思って泣くじゃろう。どうしてそなたは子供の冥福《めいふく》に傷をつけるのじゃ? その子供は生きておるのじゃよ。おお生きておるとも、魂は永久に生きるものじゃもの。家にこそおらねど、見え隠れにおまえがたのそばについておるのじゃ。それなのにそなたが、自分の家を憎むなぞといったら、どうして子供が家へはいって来られよう! おまえがた二人が、父親と母親がいっしょにおらぬとしたら、子供はいったいどっちへ行ったらよいのじゃ? 今そなたは子供の夢に苦しんでおるが、配偶《つれあい》のところへ帰ったなら、子供が穏かな夢を送ってくれるじゃろう。さあ、おっかさん、帰
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