まいになった、などとだだをこねて、今すぐ天使の位を授けてくだされとせがむのじゃ。じゃによっておまえも喜ぶがよい、泣くことはないのじゃ、おまえの子供はいま神様のおそばで、天使たちといっしょに暮らしているのじゃから』こうその昔、聖人が泣いておる母親を諭《さと》された。それは偉い聖人のことじゃから、間違ったことを言われるはずがない。そなたの子供も今はきっと、神様の御座所の前で遊び戯《たわむ》れながら、そなたのことを神様に祈っておることじゃろう。それじゃによって、そなたも泣かれずに、喜ばねばならんのじゃ」
女は片手で頬杖をつきながら、伏し目になって聞いていた。彼女はほうっとため息をついた。
「それと同じことを言って、ニキートカもわたくしを慰めてくれました。おまえ様のおことばとそっくりそのままでございました。『わけのわからんやつじゃよ、何を泣くことがあるんだ、うちの坊やも今ごろはきっと神様のそばで、天使たちといっしょに歌でもうたっておるにきまっておるよ』配偶《つれあい》はこう言いながら、そのくせ、自分でも泣いておるのでございます。見ると、やっぱりわたくしと同じように、泣いておるのでございますよ
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