まねをしたのでございますよ。あれは、あなたといっしょに暮らすことができるかどうか、脈を取ってみたわけですよ。つまり、わたくしのような謙遜《けんそん》な者に高慢ちきなあなたと折り合いがつくかどうかと思いましてな。ところが、あなたには、褒状《ほうじょう》を差し上げてもよろしいよ――いっしょに暮らすことができますわい。さあ、これでもう口はききません。ずっとしまいまで黙っております。ちゃんと椅子に腰かけて、黙っておりますよ。さあミウーソフさん、今度はあなたが話をする番ですぜ。いよいよあなたが一番役者です……もっとも、ほんの十分間だけじゃが」

   三 信心深い女たち

 外囲いの塀に建て増しをした木造の回廊の下には、今日は、女ばかりが二十人ばかりも押しかけていた。彼女らはいよいよ長老様のお出ましと聞いて、こうして集まって待ち構えているのであった。同様に長老を待ちながら、上流の婦人訪問者のために設けられた別室に控えていた、地主のホフラーコワ夫人も回廊へ出た。それは母と娘の二人連れだった。母なるホフラーコワ夫人は富裕な貴婦人で、いつも垢抜《あかぬ》けのした服装をしているうえに、年もまだかなり若い
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