》は幸いなり』、別して乳頭でございますて! あなた様はただ今『自分を恥じてはならぬ、これはいっさいのもとだ』と御注意くださりましたが、あの御注意でわたくしを腹の底まで見通しなさいましたよ。実際、わたくしはいつも人の中へはいって行くと、自分は誰よりもいちばん卑劣な人間で、人がみんな寄ってたかってわたくしを道化あつかいにするような気がするのでございます。そこで、『よし、そんなら本当に道化の役をやってみせてやろう。人の思わくなどかまうものか。どいつもこいつもみんな、わしより卑劣なやつらばかりだ!』ってんで、わたくしは道化になったのでございます。恥ずかしいが因《もと》の道化でございますよ、お偉い長老様、恥ずかしいが因《もと》なのでございます。小心翼々たればこそ、やんちゃもするのでございます。もし、わたくしが人前へ出るときに、みんながわたくしをおもしろい利口な人間だと思ってくれるという、確信があったならば、そのときのわたくしは、どんないい人間になったことでございましょうなあ! 師の御坊!」と、いきなり彼はひざまずいて、「永久の生命を受け継ぐために、わたくしはいったいどうすればよろしいのでございま
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