ように言った。「どうか遠慮をなさらぬようにな、自分の家にいるのと同じつもりでいてくだされ。何はともあれ第一に自分で自分を恥じぬことが肝心ですぞ、これがそもそも、いっさいのもとですからな」
「自分の家と同じように? つまりあけっぱなしでございますな? ああそれはもったいなさすぎます、もったいなさすぎます、がしかし――喜んでお受けいたしましょう! ところで、長老様、あけっぱなしでなどと、わたくしを煽《おだ》てないでください、剣呑《けんのん》でございますよ……あけっぱなしというところまでは、ちょっと当人のわたくしも、行き着きかねますて。これは、つまりあなたを守るために、前もって御注意するのでございます。まあ、その他のことは、まだ未知の闇に包まれております。もっとも、なかには、わたくしという人間を誇張したがっておる御仁《ごじん》もありますがな。これはミウーソフさん、あんたに当てて言ってることですよ。ところで、猊下《げいか》、あなた様に向かっては満腔《まんこう》の歓喜を披瀝《ひれき》いたしまする!」彼は立ち上って両手を差し上げると、言いだした。「『なんじを宿せし母胎と、なんじを養いし乳頭《ちくび
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