齦《はぐき》に干乾《ひから》びついて、身うちがひきつってくるようなんでございますよ。これはまだ、わたくしが若い時分、貴族の家に居候をして、冷飯にありついておったころからの癖でしてな。わたくしは根から生まれついての道化で、まあ気違いも同然でございますな、猊下様、こりゃあきっと、わたくしの中には悪魔が住んでおるのに違いございません。もっとも、あまりたいしたしろものじゃありますまいよ、もう少しどうかしたやつだったら、もっとほかの宿を選びそうなもんですからなあ。ただし、ミウーソフさん、あんたじゃありませんぜ、あんたもあまりたいした宿ではありませんからな。けれど、その代わりにわたくしは信じていますよ。神様をなあ。ついこのごろちょっと疑いを起こしましたが、その代わり、今ではじっと坐って、偉大なことばを待っております。猊下様、わたくしはちょうど、あの哲学者のディデロートのようなものでございますよ。猊下様は哲学者のディデロートが、あのエカテリーナ女帝の御世の大司教プラトンのところへまいった話を御存じでございますか。はいるといきなり『神はない!』と言いました。それに対して偉い大僧正は指を上へあげて、『狂
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