んくすぐったがりの御婦人ですな』と言ったのです。つまり、名誉にかけて、と言うつもりだったので、その、精神的な特質をさして言ったのです。ところが、その人はいきなり、わたくしに『じゃ、あなたは家内をくすぐったんですか?』と聞きました。わたくしはその、つい我慢ができなくなって、まあお愛嬌のつもりで、『ええ、くすぐりましたよ』とやったんです。ところが、その人はさっそくわたくしをこっぴどくくすぐってくれましたて……。これはもうずっと昔のことなんで、お話ししても恥ずかしいとは思いませんがね。こういう風に、わたくしはしじゅう、自分の損になることばかりしておるのでございますよ!」
「あなたは今もそれをやっているんですよ」とミウーソフは吐き出すようにこう言った。
長老は無言のまま、二人を見比べていた。
「そうでしょうとも! そして、どうでしょう、ミウーソフさん、わしは口をきるといっしょに、ちゃんとそのことを感じましたよ。そればかりか、あなたがまっ先にそれを注意してくださる、ということまで感じておりましたんで。猊下《げいか》様、わたくしは自分の茶番がうまくいかないなと思うと、その瞬間は、両方の頬が下の歯
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