時を報じた。
「ちょうどかっきりお約束の時刻でございます」とフョードル・パーヴロヴィッチが叫んだ。「ところが、倅《せがれ》のドミトリイはまだまいりませんので。あれに代わってお詫《わ》び申しますよ、神聖なる長老様! (この『神聖なる長老様』でアリョーシャは、思わずぎくりとした)当のわたくしはいつでもきちょうめんで、一分一秒とたがえたことはございません――正確は王者の礼儀なり、ということをよくわきまえておりますので……」
「だが、少なくとも、あなたは王者ではない」
我慢がならなくて、ミウーソフがすぐこうつぶやいた。
「さよう、全くそのとおりで、王様じゃありませんよ。それになんですよミウーソフさん、わしもそれくらいのことは知っておりますわい。全く! 猊下《げいか》様、わたくしはいつもこんな風に、取ってもつかんときに口をすべらすのでございまして!」どうしたのか一瞬、感慨無量といった調子で、彼はこう叫んだ。「御覧のとおり、わたくしは正真正銘の道化でございます! もう正直に名乗りをあげてしまいます。昔からの悪い癖でございまして! しかし、ときどき取ってもつかんでたらめを言いますのも、当てがあって
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