白帝城
北原白秋
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)擁《かか》へて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時|木菟《みみづく》かと
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/(月+曷)」、第3水準1−91−26]たけた
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)よいしよ/\と
−−
「ほら、あれがお城だよ。」
私は振り返つた。私の後ろからは円い麦稈帽に金と黒とのリボンをひらひらさして、白茶の背広は濃い花色のネクタイを結んだ、やつと五歳と四ヶ月の幼年紳士がとても潔よく口をへの字に引き緊めて、しかもゆたりゆたりと歩いてゐた。地蔵眉の眼が大きく、汗がぢりぢりとその両の頬に輝いてゐる。
名鉄の電車を乗り捨てて、差しかかつた白い白い大鉄橋――犬山橋――の鮮かな近代風景の裡《なか》のことである。
暑い暑い。パナマ帽に黒の上衣は脱いで、擁《かか》へて、ワイシャツの、片手には鶏の首のついたマホガニー
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