白いかたわれ月は黄に明るく匂つて来る。さうしてその空の、私からは見えぬほのかに白い白帝城を、私の小さい分身の子どもが、立つて、停つて、仰いでゐる。

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ちかぢかと城の狭間《さま》より見おろしてこずゑの合歓《ねむ》のちりがたのはな(白帝城)
花火過ぎ水にただよふ椀殻《わんがら》は鳰《にほ》の鳥よりなほあはれなり
(犬山より木曾川を下る)
水車船瀬々にもやひて搗く杵のしろくかそけき夏もいぬめり
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底本:「現代日本紀行文学全集 中部日本編」ほるぷ出版
   1976(昭和51)年8月1日初版発行
初出:「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」
   1927(昭和2)年7月
※初出紙に「木曽川」と題して連載したものの一部である旨が、底本の巻末に記載されている。
※疑問箇所の確認にあたっては、「白秋全集 22」岩波書店、1986(昭和61)年7月7日発行を参照しました。
入力:林 幸雄
校正:浅原庸子
ファイル作成:
2004年5月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozor
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