ヨンキナ、
チヨンキナ踊を、
けふの踊をひとをどり。

そなた待つとて、いそいそと、岡を上《のぼ》れば日が廻《まは》る、
雲も草木もうつとりと、
それかあらぬか、わがこころ円《まる》い真赤《まつか》な日が廻《まは》る。

チヨンキナ、チヨンキナ、
チヨンキナ踊を、
岡の草木がひとをどり。

そなた待つとて、ピンのさき池に落せばくるくると、
生きて駈けゆく水すまし、
それかあらぬか、投げ棄てたマニラ煙草の粉《こ》の光。

チヨンキナ、チヨンキナ、
チヨンキナ踊を、
池の面《おもて》がひとをどり。

そなた待つとて、夏帽子投げて坐れば野が光る
ほけた鶯すみればな、
それかあらぬかたんぽぽか、羽蟻飛ぶ飛ぶ、野が光る。

チヨンキナ、チヨンキナ、
チヨンキナ踊を、
楡《にれ》の羽蟻がひとをどり。

そなた待つとて、そはそはと風も吹く吹く、気も廻る。
空に真赤な日も廻る。
それかあらぬか、足音か、胸もそはそは気も廻る。

チヨンキナ、チヨンキナ、
チヨンキナ踊を、
白い日傘がひとをどり。
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* チヨンキナの繰返しはやはりチヨンキナの囃子にて歌ふ。
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