ら3字上げ]四十二年七月
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S組合の白痴
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雑艸園
悩ましき黄の妄想の光線と、生物の冷《ひや》き愁と、――
霊《たましひ》の雑艸園の白日《はくじつ》はかぎりなく傷《いた》ましきかな。
たとふればマラリヤの病室にふりそそがれし
香水と消毒剤と、……※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]の外なる蜜蜂の巣と、……
そのなかに絶えず恐るる弊私的里《ヒステリイ》の看護婦の眼と、
霖雨後《りんうご》の黄なる光を浴びて蒸す四時過ぎの歎《なげき》に似たり。
見よ、かかる日の真昼にして
気遣《きづか》はしげに点《とも》りたる瓦斯の火の病める瞳よ。
かくてまた蹈み入りがたき雑艸の最《もと》も淫《たは》れしあるものは
肥満《ふと》りたる、頸輪《くびわ》をはづす主婦《めあるじ》の腋臭《わきが》の如く蒸し暑く、
悲しき茎のひと花のぺんぺん草に縋りしは、
薬瓶《くすりびん》もちて休息《やす》める雑種児《あいのこ》の公園の眼をおもはしむ。
また、緩《ゆる》やかに夢見るごときあるものは、
午後二時ごろの 〔
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