tをうつはね幕《まく》の
遠《とほ》いこころにふりしきる。
思《おも》ひなしかは知《し》らねども
見《み》えぬあなたもふりしきる。
河岸《かし》の夜《よ》ふけにふる雪《ゆき》は
蛇目《じやのめ》の傘《かさ》にふりしきる。
水《みづ》の面《おもて》にその陰影《かげ》に
むらさき薄《うす》くふりしきる。
酒《さけ》に酔《よ》うたる足もとの
弱《よわ》い涙《なみだ》にふりしきる。
声《こゑ》もせぬ夜《よ》のくらやみを
ひとり通《とほ》ればふりしきる。
思ひなしかはしらねども
こころ細かにふりしきる。
蛇目《じやのめ》の傘にふる雪は
むらさき薄くふりしきる。
柳の佐和利
ほの青《あを》い雪《ゆき》のふる夜《よ》に、
電車《でんしや》みちを、
酔《よ》つて、酔《よ》つて、酔《よ》つぱらつてさ、ひよろひよろと、
ふらふらと、凭《もた》れかかれば、硝子戸《がらすど》に。
〔Yo_i! …… Yo_i! …… Yo_itona! ……〕
ほの青《あを》い雪《ゆき》はふり、
店《みせ》のなかではしんみりと柳《やなぎ》の佐和利《さわり》、
酔《よ》つて、酔《よ》つて、酔《よ》つぱら
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