瓦斯《ガス》の神経《しんけい》
酸《さん》のごと饐《す》えて顫《ふる》ふ薄き硝子《がらす》に、
失《うしな》ひし恋の通夜《つや》、さりや、少女《をとめ》の
青ざめて熟視《みつ》めつつ闌《ふ》くる瞳《ひとみ》に。
憂欝症《ヒステリイ》の霊《たましひ》の病《や》めるしらべよ……
コルタアの香《か》の屋根に、船のあかりに、
朽ちはてしおはぐろの毒の面《おもて》に
愁ひつつ、にほひつつ、そこはかとなく。
※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロンの三《さん》の絃《いと》摩《なす》るこころか、
ていほろと梭の音《おと》たつるゆめにか、
寝ねもあへぬ鶯のうたのそそりの
かつ遠《とほ》み、かつ近み、静《しづ》こころなし。
夜もすがら夜もすがら歌ふ鶯……
月白き芝居裏、河岸《かし》の病院、
なべて夜の疲《つか》れゆくゆめとあはせて、
ウヰスラアーの靄の中音《うちね》に鳴き鳴きてそこはかとなし。
[#地から3字上げ]四十二年一月
夜の官能
湿潤《しめり》ふかき藍色《あゐいろ》の夜《よ》の暗《くら》さ……
酸《す》のごとき星あかりさだかにはそれとわかねど
濃《こ》く淡《うす》き溝渠《ほりわ
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